川面に浮かんでいたカモたちが引越しを終えて、枯れたススキに覆われていた川べりも草の鮮やかな緑色に変わる初夏の雷山川。竿を手に川釣りを楽しむ人たちの姿が見られるようになり、毎年「夏がくるなぁ」と感じられる私の好きな風景です。
取材に訪れた日、可也山を望む川べりでのんびりと浮きを見つめていたトクさん。イスに腰掛けながら、3本の竿を手際よく操る様子に見入ってしまいます。草を刈って作ったトクさんの釣り座には、魚たちから見えないよう姿を隠すための草のバリケードもあり態勢は万全。魚との知恵比べに挑む熱い意気込みを感じます。
「あ、かかった」
ぐん、と竿がしなると、見ている私までお腹の底に力が入ります。どんな魚と対面できるのか?わくわくが頂点に達する瞬間です。
釣り上げたのは体長40センチのフナ。大物だ!と思いきや、これが標準サイズとのこと。コイの大物ともなると体長70~80センチほどもあり、さすがのトクさんも「2匹上げたらくたばる」のだそう。コイにフナ、オイカワ、ウナギ、スッポンなどなど、いつも何気なく眺めていた川の中がこんなにも賑やかだったとは!水中の景色を想像すると、なんだか楽しそうで思わず口元が緩みます。ここで釣ったハヤという魚を家で飼育している小学生もいるのだとか。夏の自由研究にも良いかも…?
今日ようやく発表された梅雨入り。雨では釣りも一時休止かなと思えば、なんのなんの、雨の日は絶好のウナギ釣り日和なのだそう。「これから一ヶ月くらい放浪の旅にでるけん」と告げるトクさん。ウナギを求めて周辺の川を渡り歩くのだそうです。梅雨が明ける頃にはまたこの釣り座に来るとのこと。
青い空にセミの声が響き渡り始めたら、次は子どもと一緒に、真夏の川べりを訪ねてみようと思います。