福岡市西区に住むインドネシア出身のイチャさん(本名:ノサ・ハルマディアさん)は、2人の息子をもつお母さん。子育てが一段落した今、手芸にダンス、スポーツなど幅広い趣味を楽しんでいます。
イチャさんが日本に嫁いできたのは21年前。言葉もわからない異文化の国での暮らし、特に子育てにおいては苦労の連続でした。一番の壁は何といっても言語。生まれたばかりのわが子を日本語で育てるためにも、テレビドラマを見て覚えたり、教室に通ったりして勉強しました。また、公民館で開かれる子育てサロンも大きな支えになったといいます。「子どもの育て方や関わり方を教えてくれる講座はとても役に立ったし、サロンで友達もたくさんできた。本当に助かった」と当時の思いを噛みしめ振り返ります。
母国を離れた寂しさと心細さに加え、右も左もわからない異国の地での子育てに奮闘する日々…そんな中、心と体にいつも元気をくれたのは母国インドネシアの味でした。
イチャさんの台所から漂うおいしそうな香りに「いい匂い」と声をかけたご近所さん。イチャさんができあがった料理を持って行くととても喜び、以来、たびたび料理の交換をするように。「インドネシアの人はお喋り好き。ジェスチャーでも何でもいいからたくさん話がしたい」ーそんな明るくフレンドリーな性格も相まって、地域の人ともあっという間に打ち解けました。
スパイシーな料理からスイーツまで、味わい豊かなインドネシア料理。イチャさんが開く料理教室には、すっかりその味のファンとなった参加者たちが毎回顔をそろえるのだとか。
イチャさんの自宅の庭は、料理の風味付けに使うハーブを始め、季節の野菜や花でいっぱい。土づくりは自己流だそうで、どれもみずみずしく生命力に溢れています。
「日本に来たばかりの頃は大変だったけど、今はとっても幸せ」と満面の笑みを見せるイチャさん。今は週2回のインディアカ(羽付きのボールを手で打ち合うスポーツ)に夢中です。次にインドネシアに帰ったら「懐かしい故郷の料理をたくさん食べたい」とにっこり。ふるさとの味は、ずっと変わることのないイチャさんの心の糧です。